具体的に中学数学の学習方法を見ていきましょう。
主に定期テストと公立高校の入試を想定したものになります。
一部の難関私立高校を受験する人は、学習到達目標をやや上方修正して読んでください。

ステップ1 【基礎】

中学数学では、誰にでもわかる明らかに成り立つこと、を積み上げていきます。
そのさいに、普段使わない言葉や、新しいルールがでてきます。
これら数学の用語や定義を覚えることから学習ははじまります。
いわゆる公式の暗記なども、この基礎段階です。

このとき、

  • 「なぜ、そのようになるのか」
  • 「なぜ、そのように定義するのか」

という根源的な疑問が浮かぶことがあるでしょう。
とても素晴らしい学習姿勢です。
なぜ、という気持ちが人間を学習へと駆り立てるので、この姿勢を保って学習を続けましょう。

ただし、どうしてもわからないときに、「なぜ?」にこだわりすぎないでください。
数学において、「定義の部分や基礎概念ほど難しい」こともよくあるからです。

一旦、なぜ?を保留して、とにかくその計算ルールなどに慣れてください。
運用できるようになってはじめて、はじめの部分がわかるという理解の順序を
踏むことはよくあることです。

また、新しいルールを覚えるだけでは基礎は完成ではありません。
正しく速く運用(計算)できるように練習することが大事です。
九九の仕組みを覚えて学習を終わり、実際に九九がスラスラ言えないのでは困ります。
九九の暗記とその運用はたくさん練習をしましたよね。
それと同じことです。

基礎とは、教科書レベルのことがらと思ってもらって結構です。
これが定期テストの8割近くを占めますし、高校入試の3,4割を占めます。

また、基礎とはさらに上に積み上げていくための最重要部分です。
基礎工事という言葉もあります。基礎がグラグラでは、その上に
目的の建物を建築することはできません。決して疎かにしないでください。

ステップ2 【標準】

基礎をふまえて、様々な形で出題される問題たち。
これらを標準問題と呼びましょう。
何が基礎問題で、何が標準問題なのか、その垣根に明確なものはありません。
あまりこだわらなくて結構です。

標準問題は、出題内容・パターンが決まり切っています。
あまり多くの出題ネタがあるわけではないのです。
ですから、定番パターンの問題練習を繰り返すことで、
必ずできるようになります。

問題を解いてみて、3分悩んでも解決の糸口がつかめない問題ならば、
すぐに解説を読みましょう。
その問題を1人で1時間も2時間もかけて、独力で解く必要はありません。
なぜならば、その標準問題も含めて、基礎とセットだからです。

じゃあ実際にどういうときに、どう使えるの?を学ぶのが標準問題です。
だから、基礎と標準でセットなのです。
解説を読んだときに、なぜ自分はそれができなかったのかについて
必ず考えるようにしましょう。
できなかった理由のほとんどは、基礎の適用ケースを認識(暗記)できていなかっただけでしょう。結局は、どのようなときにどのように使うのかを、1つ1つ経験値として増やしていくのです。

ですから、基礎レベルの到達度が10割とまでいかなくとも、7,8割の到達度で標準レベルの学習にも手を出していきます。
その結果、基礎レベルの真の理解に繋がることもよくあることです。
※もちろん基礎が10割に到達してないことを自覚している限り、その修練を放置してはいけません。

基礎、標準を身につけるために、何度も何度もくりかえし練習することが大事です。
くりかえし練習することで、あまり考えなくてもできる、という状態になります。
これが最終到達目標です。

スポーツや楽器の習得における反復練習となんら変わりません。
1,2回の学習で身につかないくらいでへこたれていてはいけません。
時には10回くりかえすことだってあるでしょう。
何回やればOKではなく、できるようになるまで反復します。

この標準レベルまでで定期テストのほぼすべてを占めますし、
高校入試の7、8割を占めることになります。

ここまでの学習に「思考力」や「発想力」が要求されることはありません。
求められるのは、問題文を正確に読み、ルール通り正確に運用することです。
これこそが義務教育としての中学数学なのです。

教科としての数学。
これは、天才的な能力を開発する教育ではありません。

ステップ3 【応用】やや難しい問題

このレベルまで学習することは、中学生全員の義務とは思いません。
標準までしっかり学習すればよいでしょう。

ただし、数学が得意な生徒は、このレベルやさらに超えたレベルまで学習を進めていくことになるでしょう。

中学数学における難問ですが、その難しさの要因は様々です。

  1. 題意の把握が難しい
  2. 問題文からの情報整理力が必要
  3. 処理量が多い
  4. (主に図形で)2つのことがらを結びつけるための要因が見えずらい

これらが難しさの要因としての代表例でしょう。
もちろん、これらの要素が複合された難問もあります。

しかし、いずれにしろ奇抜な発想力が必要な問題はほぼ100%ありません。
基礎と標準の延長線上にしか応用問題はないのです。

(主に図形で)2つのことがらを結びつける

が、「ひらめき」、「発想力」という範疇で語られることがよくあります。
その「ひらめき」はどこからやってくるのか。
どのように学習をしたら「ひらめく」ようになるのか。
その答えは、

  1. 基礎と標準を徹底的に学習し、これらの問題が楽勝レベルになっておくこと。
  2. 「ひらめき」が必要な問題をたくさん経験しておくこと。

これに尽きます。
完全にオリジナルな解法が要求される問題などありません。
どこかで見たことのある何かに似ているから、その問題を解くことができるのです。
※数学研究の最前線では、オリジナリティが要求されることでしょうが、一般の中学生には無縁の話です。

これらの難問を経験していくときも、まったく解法の糸口がつかめないようなら、すぐに解説を読みましょう。そして、自分に足りなかったものは何か、きちんと把握していきましょう。
解説を読んでもどこがポイントなのかさえつかめないのならば、それはあなたにとっては早すぎた出会いの問題です。あなたが他の問題練習によって十分レベルアップするまでは、その問題と向き合う資格がないと考えましょう。
数か月後にまた再挑戦すれば良いのです。
あるいは、受験が終わるまでに、あなたが十分レベルアップしない可能性だってあります。
それはそれで、悔やむことではありません。

もう少しがんばれば自力で解けそうだ・・・このようなときは解説を見ないで、数日でも数週間でも考え続けることが数学の力を伸ばす上では必要であると、よく言われます。
確かに一理あると思います。ただし、ほんの一握りの数学エリート向けの学習姿勢だと思います。ただちょっと数学が得意な程度の一般の人は、自力で解けそうならやれるところまでやって、
その後、どうしても解けないようなら解説を見ることをおすすめします。